【スプライス】ネタバレ感想と考察｜親子のきずなをダークに突き詰めたら恐ろしい結末に

「スプライス」は2009年に発表されたギレルモ・デル・トロ製作総指揮のSFホラー映画です。

デル・トロ作品の中でもややマイナーかもしれないですが、作品にこめられたテーマやクリーチャーの個性はやはりデル・トロならでは。

本作は「ガッツリ」クリーチャーというよりも、人間っぽいリアルなクリーチャー。
人間らしいからこその恐怖がジワジワと足元からのぼってくるように感じます。

ひっくりする系の典型的なホラーが好きな方にはおすすめしませんが、じっくり考えたい系、考察したい系にはもってこいの一作です。

そして監督が近年のホラー映画史に残る「CUBE」監督のヴィンチェンゾ・ナタリ。
彼は「CUBE」以降も「カンパニー・マン」や「ハウンター」など、メガヒットではないけどサスペンス好きが見逃せない作品を生み出しています。

映画「スプライス」を配信しているVOD一覧

2024年6月現在、「スプライス」を配信しているVODサービスは下記のとおりです。

映画「スプライス」の作品概要とあらすじ

作品概要	詳細
製作年	2009 年
映画ジャンル	SFホラー
監督・脚本	ヴィンチェンゾ・ナタリ
製作総指揮	ギレルモ・デル・トロ
製作	スティーヴ・ホーバン
キャスト	クライヴ・ニコリ – エイドリアン・ブロディ エルサ・カスト – サラ・ポーリー ドレン – デルフィーヌ・シャネアック 性別転換後のドレン – デルフィーヌ・シャネアック 幼いドレン – アビゲイル・チュ ギャビン・ニコリ – ブランドン・マクギボン ジョアン・ショロ – シモーナ・メカネスキュ ウィリアム・バーロー – デヴィッド・ヒューレット

映画「スプライス」のネタバレ感想

引用：IMDb

「気味悪い」「気色悪い」の表現がぴったり

西洋ホラーといえばびっくり系が多い気がしますが、本作はジワジワとせりあがってくるような恐怖と、後味の悪さが格別で、思い出すと段々怖くなってくるような一作です。

登場する「新種生物」で問題児の「グレン」は、生まれたときからなんとも気味悪いヌラっとした姿です。
成長すると、グレンの持つ性別的な力を妙に感じさせるような見た目や動きは、なんとなく気味悪くて、その絶妙な表現が秀逸です。

すごく怖いわけではないのに忘れられない強烈な不快な印象を植え付けられているようです。
恐るべき「グレン」はその顔貌（がんぼう）も行動も、見ているうちに段々狂気を感じて怖くなってきます。

グレンは精神的にはとても未熟なのに中途半端に知能は高めな思春期手前のような子供。
ただ厄介なのは、気に入らなければ人間を剛力でねじふせ、容赦なく思いやりもまったくなく痛めつけるところ。

そんな厄介なクリーチャーは、いずれ想定外の恐ろしい成長を遂げます。

ラストで、グレンによる育ての親への非人道的な行為は、衝撃だけでなく身の毛がよだちます。

ムナクソ系が嫌いな人は見ない方がいいかもしれないラストです。

考察｜親子とのきずなと、母性の在り方を問う

引用：IMDb

グレンが親であるエルサやクレイヴに、力づくで性的にも迫るその姿は、「親子のきずな」や子供の暴力をどう受け止めるか、倫理観を問われるような気分になります。

遺伝子学者として新種生物の開発を行うエルサは、秘密裏に生み出したグレンをとてもかわいがり、もはやそれは研究対象ではない存在となっていました。

エルサは自分自身が母親に愛されなかったトラウマを抱えており、グレンが自分のような孤独を感じないようにと色々と頑張ってはみます。
しかし結局、グレンが「女性」的な面を見せ始めると、エルサは自分の母親がしたのと同じようにグレンを嫌悪し精神的・肉体的に虐待し始めてしまうのでした…。

ただ、エルサとグレンが違うのは、肉体的な強さと生物として生き抜くための残忍さを持っている点でした。

性別を変えられる新種生物であるグレンは、メスにもオスにもなれるのです。

ラストでは、グレンは自身の母親エルサを性的に虐待して子供を作ろうとしているのです。

こんなにも忘れられないくらい胸クソ悪い、後味悪い映画は少ないはず。

映画「スプライス」を見るのにおすすめなVOD