【IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。】ネタバレ感想と考察｜ルーザーズは健在

「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」は2019年に公開されたスティーヴン・キング原作のホラー映画です。

2017年の『IT/イット　“それ”が見えたら、終わり。』の続編で、少年たちの27年後を描いています。
ストーリーもキャラクターも、前作をそのまま踏襲しているのでIT好きになった人には最高。

続編では大人だからこその憔悴や葛藤が描かれつつ、有名ホラーのオマージュもあります。
前作の少年少女ホラー以上に楽しめること間違いなし。

前作はこちら。

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映画【IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。】のクレジット

【IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。】あらすじ

舞台は、前作『IT／イット “それ”が見えたら、終わり。』から27年後。
平穏な日々を送っていた“ルーザーズ・クラブ”の面々に、デリーの町から再び悪夢の知らせが届く。
その知らせは、突如として起きた連続失踪・惨殺事件だった。

最初の犠牲者は、町のカーニバルに訪れていた同性愛者の青年エイドリアン。
恋人と共に帰宅中、同性愛であることをからかう不良たちに暴行され川に突き落とされた彼の前に、道化師ペニーワイズが現れる。
怯える彼に優しい声をかけるふりをしながら、突然その鋭い牙で首元に噛みつき、残虐に食いちぎる。
次に狙われるのは、顔に火傷のあとがあることで周囲にからかわれ、それが大きなコンプレックスとなっているアリス。
かわいそうな少女アリスは、火傷を負った自分の顔を恥じており、ベースボールの試合で熱狂する家族に飽き飽きしていたときにペニーワイズに出会ってしまう。
「その傷を治してあげるからこっちにおいで」と誘われるがまま近寄っていくアリス、ペニーワイズはサメのような牙をむき出しにしてアリスの小さな顔をかじり取ってしまう…。

そして、町のあちこちで怪死事件が続発するが、血の跡だけを残して子どもが消え、警察は手掛かりを掴めない。
デリーに残っていたマイクは、この連続事件の裏に“あの27年周期の悪夢”が戻ってきたことを悟り、仲間たちに連絡を取り、かつての誓いを思い出させる。
ビル、ベバリー、リッチー、エディ、ベンの5人はそれぞれの葛藤を抱えつつ、マイクからの呼びかけを受け、“ルーザーズ・クラブ”としてデリーに戻ってきた。
しかし27年という歳月は、彼らの記憶を曖昧にし、かつての恐怖心すら薄れさせていた。
彼らの意図とは別に、どうやら町を離れると “それ”にまつわる記憶が薄れ失われていくことが判明。
現にマイク以外の“ルーザーズ”たちは、町に足を踏み入れた瞬間から、彼らは奇妙な幻覚や悪夢に苛まれ、徐々に記憶の断片を取り戻していくのだった。

弟を失いペニーワイズの一番の被害者でもあるベンは、レストランで仲間たちと再会するものの、いつの間にかペニーワイズの手の中に踏み入ってしまったことを感じ始める。
お酒で楽しむ古き仲間は、突如として皿の中の料理が腐敗し、天井から血や虫が降り注ぐ幻覚に包まれる。
あっという間にペニーワイズの手中にかかってしまったことを悟る“ルーザーズ”。

マイクは、27年前に行われた“儀式”の存在を仲間に打ち明ける。それはペニーワイズを封印する唯一の方法だという。しかし、儀式にはそれぞれが過去のトラウマと向き合い、恐怖の象徴を手に入れる必要があった。
ビルは子どもの頃に弟ジョージーを救えなかった罪悪感と対峙し、ボートを握りしめる。
ベバリーは虐待的な父親との記憶を再び体験し、当時の恐怖を振り払う。
エディは子どもの頃に信じ込まされた“病気への恐怖”を乗り越えようとする。

各々が“恐怖の遺物”を持ち寄る中、ペニーワイズはますます攻撃的になる。下水道や廃屋を舞台に、巨大な怪物の姿や異形の虫の姿となって襲いかかり、仲間の精神を引き裂こうとする。エディは決死の覚悟で仲間を守ろうと立ち向かうが、ペニーワイズの触手に貫かれ、命を落としてしまう…。

ネタバレ感想と考察｜「怖い」以外に何かある！奥深いホラー

内面の恐怖をえぐりだす、ペニーワイズは健在

本作は「大人が共感できる」かつ「人には言えない恐怖」の映画に進化しています。

前作で、その容姿によるビジュアルショックが大きかったペニーワイズ。
見た目のインパクトだけでは語れない、人が内側に抱える「恐怖」をえぐり出すペニーワイズに世界中が震撼しました。

本作でも、登場人物のトラウマや罪悪感を巧みにえぐる心理的恐怖は変わらず。

大人になったからと言って、恐怖に打ち勝ちやすいわけではありません。

子供の頃の恐怖は消えず練り上げられてさらに恐ろしくなり、人には言えないやましさや恥も加わり、立ち向かうことが前作以上に困難になっています。

幻覚や形を変えた怪物が過去の傷を突くシーンは、観客自身の心にもじわじわと迫ります。

特に鮮明に印象に残るのは、べバリーが実家だったアパートを訪ねたとき。

実家だった部屋にはすでに別の住人である老婆が住んでおり、実家だったことを説明して部屋に入れてもらうべバリー。
過去にふける彼女の後ろを全裸の老婆がゆっくりと通り過ぎ、現実か妄想か分からない、老婆に化けたペニーワイズの罠にはまってしまうのでした。

本作では「驚かす」のではなく「心に残す」怖さが強く、そこがホラー映画としての完成度を高めていました。

仲間の絆｜大人になれば変わってしまうものもある

27年ぶりに再会したルーザーズ・クラブたち。

長い年月が経っても、過去の恐怖をともに残りえた絆は消えていません。

半面、大人になったことで素直に打ち明けられない秘密や、会えなかった期間で生まれてしまった葛藤など、幼馴染だからこそ描かれる歯痒いシーンもたくさん。

べバリーは社会的に成功するものの、夫の束縛とDVを恥として隠しています。
ビルは作家として大成功まで行けず、仕事も家庭も中途半端で、べバリーへの執着を隠せずにいます。
超イケメンに成長したベンも、べバリーへの想いを抱えたまま悶々としています。

大人になったことで、子供時代のように素直に分かち合えないルーザーズですが、仲間が恐怖に打ちのめされそうになったときは、自らをかえりみず助けようと動かずにはいられません。

見ようによってはB級な遅めの青春ホラー。
でもルーザーズの面々がかかえる恐怖に寄り添って描かれているので、応援したくなり、そして勇気をもらえる作品に仕上がっているんです。

まとめ｜味のあるホラーを見たいならはずせない

「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」は前作同様、ホラーとして楽しむよりも、青春の名残を味わいたい大人向けであり、仲間の絆で感動したい人向けでです。

怖すぎない映画で、ヒューマンドラマなホラーを楽しみたいなら、キング作品は最高です！