タイムループもの【サウンド・オブ・サンダー】ネタバレ感想と考察｜超B級映画が訴える、行き過ぎた科学への警鐘

監督 ピーター・ハイアムズ
脚本 トーマス・ディーン・ドネリー、ジョシュア・オッペンハイマー、グレッグ・ポイリアー
原作 レイ・ブラッドベリ『雷のような音（英語版）』
製作 ハワード・ボールドウィン、カレン・ボールドウィン、モシュ・ディアマント、アンドリュー・スティーヴンス
製作総指揮 エリー・サマハ、ロマーナ・シサローヴァ、ジョン・ハーディ、リック・ナサンソン、イエルク・ヴェスターカンプ、ウィリアム・J・イマーマン、ブレック・アイズナー

トラヴィス・ライヤー博士： エドワード・バーンズ
ソニア・ランド博士： キャサリン・マコーマック
チャールズ・ハットン： ベン・キングズレー
ジェニー・クレイズ： ジェミマ・ルーパー
マーカス・ペイン： デヴィッド・オイェロウォ
Dr.ルーカス： ヴィルフリート・ホーホルディンガー

【序盤】
タイムトラベルにおける3つの規則
その１「過去にはどんな些細な変化も起こしてはならない」
わずかな変化でも過去に残してしまうと現代を大きく変えてしまう
その２「過去には何も残してはならない」
その３「過去からは何も持ち去ってはならない」
過去に存在していた生物を持ち去れば、それがたった一つだとしても、全ての生態系に影響を及ぼす

【前半】
2055年、タイムサファリ社はハイクラス層相手にタイムトラベルの旅を提供していました。
それは恐竜が生きている時代に道を作り出し限られた場所から恐竜を狙撃して殺すというもので、過去を冒すことも現代に生物を持ち帰ることもない、安全でスリルを味わえるというもの。
ハントする恐竜は、噴火により死に至る直前のタイミングにいたものを狙えるよう、タイムトラベルのシステムは毎回そのベストタイミングに設定されており、これまで失敗は一度もなくタイムサファリ社は好評を得ていたのです。

タイムサファリ社につとめるライアン博士には、いつか絶滅した動物を復元させたいと夢見ていました。
2055年にはライオンさえも絶滅しており、動物園の動物たちさえもウィルスの流行で絶滅が進みクローンを作ることさえも困難になっていました。
しかしタイムトラベルを可能とするシステム「TAMI」が開発されたことで絶滅動物復元も夢ではなくなってきていたのです。

「TAMI」はタイムサファリ社によるタイムトラベルに使用されていました。
ある日のタイムトラベルツアー後、タイムサファリ社の社長ハットンや顧客たちがパーティーをしていると、そこに「TAMI」の開発者であるソニア・ランド博士が乱入します。
実は社長ハットンはソニアをだまして「TAMI」を横取りしていたため、ソニアは恐竜狩りをして楽しんでいるといずれ未来に恐ろしい変化が起きると警告しようとしていたのでした。
ライアンとソニアが二人っきりで話した際、ソニアは彼の動物復元の夢に共感を伝えハットンにはくれぐれも気を付けるように伝えて去りました。

次のタイムトラベルツアーの日は、ミドルトンとその友人のエックルズが観光客。
ツアー前に清掃担当の男性が装置を落としてしまったことで、ライアンの銃が故障していました。
しかしそれに気づくことなくツアーを開始するライアンたち。
ツアー中は過去の世界で観光客たちが銃で無駄に生物を傷つけないために、ライアンが発砲するまでジェニー含め他のスタッフも観光客も弾が出ない仕組みに設定されていました。
そのため、いざツアーの中で恐竜が現れてもライアンが銃を撃つことができず、パニックに陥ります。
ライアンやジェニーはミドルトンとエックルズに茂みに隠れるように伝え、危機一髪で銃を修理して恐竜を撃ち殺しました。
観光客の男性2名からはクレームが出たが、ハットンが言いくるめて事なきを得たのでした。
その日の夜中、ひっそりとタイムウェイブが世界をひとなめします。

事故の翌日、世界各地で異変が起きていました。
冬なのに熱帯のような暑さと湿度、海辺では魚が大量に打ち上げられ、アメリカに群生していないはずの太く強い根の植物が民家の壁を突き破るなど。
ライアンは会社までの出勤中、そんな異常な状況を横目で見ていました。
そしてその日もタイムトラベルツアーが始まります。
いつも通りの手順で開始したタイムトラベルでしたが、恐竜世界に降り立ったときには既に恐竜が死んでおり、火山が爆発します。
ライアンやジェニーたちは急いでタイムトラベルマシンに再度乗り込み現代に戻ります。
原因を分析したスタッフの一員ルーカスは、「TAMIのミスで、いつも到着する時間より5分遅れていた」とライアンたちに説明しました。
しかし人工知能を備える「TAMI」は「私はいつも通り、正確な座標にみなさんを送りました」と主張。
スタッフたちは社長ハットンにもこの状況を伝えますが、ハットンに危機感はなく気にもしていません。
それよりもハットンが気にするのはタイムトラベルツアーができなくなっては会社の存亡に関わるということだけでした。

【中盤】
ライアンは仕方なく、事情を汲んでくれそうなソニアのもとへ向かいます。
ソニアのマンションも異常事態に陥り、たくさんの植物を育てるソニアの部屋の前はマンション住民たちが「お前の部屋の植物のせいだ」と押しかけていました。
ラインは宅配業者のふりをしてソニアの部屋に入り、事情を説明します。
ソニアは慌てる様子もなく、事故が起こってからの経過時間や事故が起こった白亜紀について尋ねます。
そのときちょうど、2度目のタイムウェイブが襲ってきます。

タイムウェイブの後、会社の中のはずなのに明かりは一切なく真っ暗。
そこら中に植物の太い根のようなものがはびこり、廃墟のように変わり果てていました。
ライアンとソニアは、タイムトラベルを再度行うことが難しいと考え、ライアンの銃が故障していたタイムトラベル時に何が怒っていたのか調べようとします。
真っ暗な社内で何とかそのときの映像を引っ張り出し見てみるものの、おかしな点はありません。
しかし恐竜から逃げて茂みに隠れたミドルトンとエックルズの姿はレコーダーでは追い切れず、この撮影できていない瞬間に何か起こったのではないかと考えます。
加えてそのタイムトラベル時、現代に戻ってきたときには出発前から1.3グラム増量していることが判明。
ミドルトンとエックルズが何かを過去から持ち帰ったに違いないとライアンたちは相談します。
ソニアは、バイオフィルターがあるから持ち帰ることは不可能と主張しますが、ハットンが「電気代がかかりすぎてバイオフィルターの電源を切っていた」と告白。
結局過去から1.3グラムの何かを持ち帰ったことで、世界は変わってしまったようなのです。

ソニアはそこで、「スリングショット」を提案します。
それは、今回の原因を起こしたタイムトラベルツアーの1年前にワームホールを作り出し、そこへ移動。
そこから「スリングショット」で1年後にとばしタイムトラベル時に移動すれば、この状況を阻止できると。
しかし、「スリングショット」には懸念点があり、膨大な電力を消費するため15秒程度しか移動できないというのです。
結果、何が原因で世界が変わってしまったかを突き止めなければ「スリングショット」を使う意味はなく、1.3グラムの何かを見つけるため、ミドルトンとエックルズに聞いてみよう、と一同は意を固めます。

タイムトラベルを非常に怖がっていたエックルズが怪しいのでは、と話し合い、まずはエックルズのマンションに向かおうと、ライアン・ソニア・ジェニー・マーカス・ルーカスが会社から出発します。
ソニアはその際、「外は植物さえも危険な世界に変貌している。私たちが知っている現代とは違う進化を遂げて強い生き物になっているはず」とみんなに警告。
また進化はもちろん、植物だけでなく恐竜から進化した生物も存在するのでは、と言います。

会社から一歩踏み出す一行ですが、その途端どこからか恐ろしい何かの鳴き声が響きます。
巨大な足跡に恐怖しながらも少しずつエックルズのマンションに向かうライアンたち。
マンションまでの道中にある公園は、深く茂った森に変貌していました。
静かに木々の中を進む一行でしたが、マーカスが植物のツルに足を取られさらわれてしまいます。
必死に追いかけたライアンが目撃したのは恐ろしく巨大なマントヒヒの化け物。
立ち上がると2メートル以上もありそうなマントヒヒ喉を撃ち抜いたライアンは、マーカスを引っ張って逃げますが、マントヒヒの群れが押し寄せ毒に置かされているマーカスを泣く泣く置いていくことに決めます。
マーカスはその後毒で朦朧としている状態のまま、マントヒヒの餌食に。

何とかエックルズのマンションにたどり着いたライアン、ソニア、ジェニー、ルーカス。
エックルズに事情を説明してタイムトラベル時の荷物を調べますが、怪しいものは見つかりません。
仕方なく、ミドルトンのもとに向かうことに決めた一行は、エックルズに車を借ります。
エックルズのマンションの住人たちは激変した世界におびえており、ライアンたちは彼らに「必ず救助に来る」と約束して去ります。

ミドルトンのマンションに着いた一行ですが、マンションの内外にたくさんの人が倒れており、建物には毒を放つ植物がはびこっていました。
その毒は精神をおかすのか、ミドルトンの部屋にたどり着いたものの、彼はライアンたちに襲われると勘違いし攻撃してきます。
なんとかミドルトンから隠れてタイムトラベル時の荷物を探しだし調べたところ、なんと靴の裏に踏みつぶされた蝶が張り付いていたのです。

ジェニーはたった一匹の虫が死んだだけでこれほどに世界が変化するのか、と疑念を呈しましたが、ソニアは「虫は卵を産み進化をつなげていく。ミドルトンはひとつの進化を破壊したからすべてに連鎖した」と説明。
ライアン、ソニア、ジェニー、ルーカスは原因を突き止めたのでタイムサファリ社に帰ろうと車に乗り込み帰途を急ぎます。
車が会社へ向かう中、空から巨大な鳥のようなコウモリのような生き物が襲い掛かってきて車の屋根を突き破りルーカスを空へさらいます。
愕然とするライアン、ソニア、ジェニー。
さらなる怪物の追撃に絶体絶命の彼らですが、そこにタイムウェイブが襲ってきます。

【後半】
波が過ぎ去った後になんとかタイムサファリ社へ帰還するライアン、ソニア、ジェニー。
しかしそこはまるで真っ暗なジャングルで、足元は水浸し。
そこでライアンとソニアは過去を元通りにしても、今回の記憶がない過去のライアンたちは何も対策できず、同じことを繰り返すと話し合います。
ライアンはタイムトラベルによる進化への影響と危険性を過去の自分に伝える方法を考えていました。
そして社内でハットンが死亡しているのを見つけ、一行は戸惑いながらもスリングショットを使うため電力を確保できるソニアの大学に向かうことに決めます。
タイムサファリ社の天井には、あのマントヒヒの化け物が群生するかのようにぶら下がっており、音を立てないようにライアンたちは気を付けて必要機材を運び出そうとしましたが、隠れていた事態の読めていない重役によりマントヒヒたちが襲い掛かろうとします。
静かに逃げるライアンたちと、ヒヒに襲われる重役。

ライアン、ソニア、ジェニーは地下鉄を通ってソニアの大学に向かおうと考えます。
地下鉄は水浸し、半壊の電車内を歩いていた一行ですが、突然頭上にトンネルが崩れ落ちてきます。
崩れたトンネルの裂け目からは大量の水は流れ落ちてきて、地下鉄が水没するのは時間の問題。
一行は急いで電車内を通り抜けて先に進もうとしますが、そのとき恐竜のようなウナギの怪物が電車内に入り込み、ジェニーに噛みつきそのまま連れ去ってしまいました。
ライアンとソニアはそのまま水に沈み追いかけることもできず、再び襲ってきたウナギに食べられそうになるライアンでしたが危機一髪で助かり、ソニアとともに脱出することに成功します。
やっとソニアの大学までたどり着いた2人は、急いで学内へ。
どこからか2人を追いかけてきたマントヒヒの怪物の大群が押し寄せて、大学の建物の外側から侵入しようと壁を駆け上っていきます。

ソニアの研究室でなんとかパソコンを起動し「TAMI」と連動するのに成功します。
ライアンはタイムトラベルのために着替えますが、もう研究室のすぐ外にまでヒヒの怪物がやってきています。
ライアンがタイムトラベルする直前、ソニアは「なんとかこの事態を繰り返さないよう過去のあなたに伝えて」と言いライアンはそれにうなずき過去に転送されます。
ライアンが転送された直後、最後のタイムウェイブが襲いソニアは半魚人のような姿へ変貌してしまいました。

一方、事件の起こるタイムとアベルツアー1年前に飛ばされたライアンは、そのままスリングショットでタイムトラベルツアーへ移動。
そこはライアンの銃が故障し恐竜が今にも食いかかろうとしているところでした。
ライアンはジェニーに駆け寄り「僕を撮れ」と言い、撮影係であるジェニーは未来に起こることを話し、ジェニーにこのことを誰にも言わずに撮影した映像を過去の自分に渡すように伝えます。
そしてライアンは蝶を踏みそうになっているミドルトンを間一髪で食い止め、そのまま消えてしまいました。
ジェニーは元の世界に戻ってから、ライアンにその映像が入ったディスクを渡します。
ライアンはすぐにソニアのもとに向かい、タイムサファリ社をやめたこと、ソニアが予言した未来がディスクに証言されていることを伝え、ソニアは何が起こったかを悟りライアンと向き合います。