「遊星からの物体X」は1982年に発表されたSFホラー映画です。
ホラーやクリーチャー映画を語るには欠かせないジョン・カーペンター監督の代表作。
当時の技術を駆使した特殊効果は、現在見ればもちろん拙く見えるところは多いのに、不思議とそれが気にならないほど没頭すること間違いなし。
登場人物が多いので顔と名前を一致させるのが苦手な人は混乱するかもしれませんが、推理モノではないので覚えられなくても大丈夫です。
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映画「遊星からの物体X」の作品概要とあらすじ
| 作品概要 | 詳細 |
|---|---|
| 公開年 | 1982年 |
| 映画ジャンル | SFホラー |
| 監督 | ジョン・カーペンター |
| 製作総指揮 | ウィルバー・スターク |
| 原作 | ジョン・W・キャンベル『影が行く』 |
| キャスト | R・J・マクレディ – カート・ラッセル ブレア – A・ウィルフォード・ブリムリー ギャリー – ドナルド・モファット ドクター・コッパー – リチャード・ダイサート チャイルズ – キース・デイヴィッド パーマー – デヴィッド・クレノン ヴァンス・ノリス – チャールズ・ハラハン ジョージ・ベニングス – ピーター・マローニー フュークス – ジョエル・ポリス ノールス – T・K・カーター |
約10万年前、宇宙から飛来した円盤が地球に引き寄せられ、大気圏で炎に包まれながら南極へと落下するシーンから物語は始まります。
1982年の南極大陸にて、一機のヘリコプターが真っ白な雪原をひた走る犬を空から追いかけています。
追われた犬はアメリカ南極観測隊第4基地の敷地内へ逃げ込んでいきます。
ヘリは爆発してしまいますが、なんとか生き残ったヘリに乗っていた男はなおも犬を殺そうと銃を乱射。
その流れ弾がアメリカ基地の隊員にあたってしまったため、アメリカ基地の隊長が、話の通じないヘリ隊員をやむなく射殺します。
ヘリを調べたところそれはノルウェー隊のもので、なぜ執拗に犬を追っていたのかは不明。
犬は普通の犬のようで、アメリカ基地で保護されました。
ノルウェー隊に何が起こったのかを確かめるために、ヘリ操縦士のマクレディと数名がノルウェー隊基地へ向かいます。
しかし基地は火事が起こったかのような状態で人の様子もありません。
マクレディたちが中に入って調べると、そこには自分で喉を切り裂いたかと思われる死体や、明らかに何かを取り出したと思われる巨大な氷の塊など、異常なものばかり。
そしてマクレディたちは取り分け異様な死体を見て戦慄します。
それは人間の姿をとどめておらず、何かと体が接合したような、体から何かが分かれ出ようとしているような状態で焼き殺されており、唯一人間の顔だけが確認できるような状態でした。
一行はノルウェー基地内に残されていた記録用のフィルムと異形の死体を、調査のためアメリカ基地に持ち帰ることにしました。
その夜、アメリカ基地では保護された犬が、基地内の他の犬たちの檻に入れられました。
すると急に他の犬たちがけたたましく吠え始めたかと思うと、保護された犬は頭が変形し太い触手のようなものが飛び出します。
触手のようなものは他の犬たちを絡めとるようにして寄生しているようです。
吠え声を聞いてかけつけた隊員たちは、異形の犬を見て驚愕しながらも火炎放射器で犬を焼き殺します。
異常事態を察してアメリカ基地隊員たちは、ノルウェー基地から持ち帰ってきたフィルムを映し出し調べます。
そこには、広大な雪原にぽっかりとあいた巨大なすり鉢のような大穴が映っており、その穴の中を調査している様子でした。
そして持ち帰ってきた焼死体から細胞を摂取し調べたところ、その細胞は他の細胞に同化し成り代わっていくことが判明します。
その頃、焼死体からゆっくりと触手がのび、そばにいるアメリカ隊員が襲われます。
アメリカ隊員はその「何か」に同化されてしまい、「何か」は徐々にアメリカ基地内に浸食していきます。
しかし同化されても見た目は元の人間と変わらないため、基地内の誰が「何か」になってしまったかどうかは分かりません。
南極という大きな密室状態の中、誰が取り憑かれているのか疑心暗鬼になりながら、「何か」を見つけ出し倒そうと隊員たちが争いを始めます…。
ネタバレあり｜映画「遊星からの物体X」の感想
特殊撮影に時代を感じるのに、見ていて苦にならない！
随所で出てくる時代の技術を感じさせるクリーチャーが魅力で、とにかくそれがグロテスク！
当時これほどまでにグロテスクなクリーチャーを追求した映画はなく、ジョン・カーペンターはその意味でホラーとモンスターを語る上では欠かせない監督です。
特に記憶に残るのは、隊員の一人であるノリスが心臓発作で倒れたため、心臓マッサージを行われるシーン。
ノリスの心臓が戻らないため、ドクターが電気ショックを与えようとした瞬間、ノリスの胸が真っ二つに割れ鋭い牙の生えた大きな口が現れます。
その口はドクターの手から肘までを食いちぎり、ドクターはそのままショックで死亡。
ノリスは他の隊員たちに焼かれますが、彼の首は炎から逃れようとゴムのように伸びてちぎれ、頭だけの状態になって転がり落ちます。
頭からはクモのような足が生え、カサカサと部屋から逃げ出そうとするのです…。
このシーンは本作でも最も有名です。
グロテスクな描写が苦手な人は要注意。
ただ、本作のグロテスクさはあまりにも現実離れしているので、意外に平気かもしれません。
私自身、痛そうなものやグロいのはあまり好きではないですが、
この映画はありえない状態のクリーチャーばかりで、
血も作り物っぽいのであまり気になりませんでした！
全体的に音楽が少なく、その場の音をそのまま使っているシーンが多いので、それがまたリアルです。
要所要所で使われている音楽も、映画の不気味さを惹きたててゾワゾワきます！
クリーチャー好きにはこちらの映画もおすすめです。
ラストは視聴者側が想像できる
「間もなく地球上の人類はこの生物に同化されてしまう」
という事態に立ち向かうアメリカ基地隊員たち。
お互いが同化されているのではと疑心暗鬼になりながら、徐々に人数が減っていきます。
中心人物であるマクレディは最後まで知恵をしぼって「何か」と闘います。
ラストは「何か」を倒したと思えるのですが、基地全体が破壊され、救助を求めることもできない状況。
救助を待つための場所も暖も食料もないので、吹雪の南極で生きられる時間はあとわずか。
しかも唯一ともに生き残ったチャイルズも、「何か」に乗っ取られているかどうか分からないままラストを迎えるんです。
ハッピーなのかバッドなのか分からないエンドは、視聴者の想像をかきたててくれます。
考察｜人類の傲慢（ごうまん）さを痛感させるエイリアン
「遊星からの物体X」は、小さな生物が人間に取り憑き、感染症のように人類を侵食していこうとする恐怖を描きます。
南極で起こった小さな異変に、当初基地隊員たちは少しの警戒で乗り越えられると思っていました。
しかしその異変は予想以上に早く甚大（じんだい）なダメージを基地に与えていき、基地隊員たちはやっと人類の危機が迫っていることに気づきます。
また誰が取り憑かれているのかが判断できないので、基地隊員たちはみな疑心暗鬼になっていき争いが始まります。
ちっぽけと思われた生物のせいで、団結していれば乗り越えられたかもしれない恐怖に足を取られていく様子は、人間の稚拙さをそのまま描き出したかのようで皮肉です。
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